書籍風スタイル
「改行スタイルだって?」彼は呟いた。「そんなもの、雰囲気で良いのだよ、雰囲気で」
雰囲気と言いつつも、段落と段落の間に空行を入れている。ある程度のルールはあるだろう。
「ちなみに、会話文の間に空行を挟むかは、好みだ」
「この場合、空行は入っていませんね」
準書籍風スタイル
「地の文と会話文の間に改行を入れないのが書籍風であるとするならば」
彼は紅茶を飲んだ。
「これが準小説風スタイルだ」
「二行目の地の文に、インデント(行頭の空白)が入っていないのが特徴ですね」
書籍なら、会話文と地の地の文に、改行を入れないだろう。このスタイルは、彼もほとんど見かけないらしい。
段落切りスタイル
「改行スタイルには、ポイントが二つある。それは、いつ改行するか」
彼は紅茶をすすった。
「そして、いつ空行を入れるかだ」
このスタイルでは、一文区切りで改行する。
一段落分の文章を入力したら、空行を挿入する。
シンプルだ。
が、横に広い端末からは読みづらいかもしれない。
意味区切りスタイル
この文章、一見、段落切りスタイルと似ている。
しかし、空行を入れるタイミングが、段落ではなく、意味の区切りにおいて行われる。
「したがって」
彼は紅茶をすすった。
「会話文の間に地の文が入っても、空行を入れなくてよい」
ひと段落がもっと長くても良いかもしれない。このように、複数の文を続けてから。改行したって。いい。
ポイントは、空行を入れるタイミングだ。上の行とこの行の間には、空行を挿入しなかった。小さな意味の区切りで改行をし、大きな意味の区切りで空行を入れるということだ。
このスタイルが、なろうで最もメジャだろう。不規則で分かりにくいようにも思うが。
明日のご飯は、カレーライスにするかなぁ。
二空行のスタイル
「私はこのスタイルのファンなんだ」
「へー」
「特徴は、会話文の間に気軽に短い地の文を挟みにくくなくなることだ」
ほら、縦に長くなる。そう彼はいい、紅茶をすすった。地の文は長めが基本で、リアルタイムな描写はあまりしないらしい。しかし、そこまで言い切ると、改行スタイルというよりも、特定の作風を指すことになるのでは無いだろうか。
「確かに制限が強い書き方かもしれない。故に、このスタイルの文体は、模倣するのに適している」
「私の心の声に答えないでください。……この形式では地の文と会話文、どちらかが連続することが多いみたいですね」
「そうだ。だから今、私は紅茶を飲みたいのだが、飲むと長々とした地の文が始まってしまうから、ためらっている」
「私が飲んであげますね」
「おい」
彼の紅茶をぐっと飲んだ。香りの良さと焦り具合に、思わず顔がほころんでしまう。彼は何か言いたがっていたが、今口を挟むと、二つ空行が入ってテンポが悪くなるため、黙っているようだ。黙らざるを得ないのが、このスタイルの暗黙のルールだった。
私は上機嫌で新聞を開いた。まだ彼は干渉できない。会話文と会話文の間には、三段落以上の地の文が挟まるのが美しい、そう彼は感じるからだ。しかし、そろそろ限界みたいだった。
「おいっ、間接キスだぞ!!」
「あっ」